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◆2005.12.30(金)◆
商――――――│posted at 02:36:56

判例 S41.12.23 第三小法廷・判決 昭和39(オ)259 建物所有権保存登記抹消登記手続等請求(第20巻10号2227頁)

判示事項
  創立総会による変態設立事項の変更

要旨
  創立総会において決議することができるいわゆる変態設立事項の変更は、その縮小または削除に限られ、あらたに変態設立事項に関する定めを追加し、または既存の規定を拡張することは許されない。

参照・法条
  商法168条1項
[会社法28条],商法185条1項[会社法96条],商法187条1項[会社法66条,73条2項4項,100条2項]

内容
 件名  建物所有権保存登記抹消登記手続等請求
(最高裁判所 昭和39(オ)259 第三小法廷・判決 棄却)
 原審  大阪高等裁判所

 

主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人藤居謙三の上告理由第一点について。
 商法上、現物出資、財産引受のようないわゆる変態設立事項は、原始定款の相対的記載事項とされ、その記載がなければ効力を生ぜず 
(一六八条一項[会社法28条]、設立経過中において特に裁判所の選任する検査役の調査を受けるべきことが要求され(一七三条、一八一条[会社法33条]、発起設立の場合には裁判所、募集設立の場合には創立総会において、その事項を不当と認めたときは変更することができ(一七三条二項[会社法33条7項]、一八五条一項[会社法96条]また、募集設立の場合には株式申込証にその事項を記載し株式を引受けようとする者にその内容を知らせることが必要とされている(一七五条二項[会社法59条1項2号]。かような厳重な法の規制は、これらの事項が、発起人の濫用の対象となり、発起人その他の第三者の利益のために会社の財産的基礎が害される危険が多いため、会社資本の充実を期して会社債権者を保護し、併せて他の株主の利益が害されることを防止する目的に出たものであることは明らかである。されば、右一八五条一項[会社法96条]による創立総会の変更権は、原始定款記載の変態設立事項が不当と認められる場合に、これを監督是正する立場から、がような事項を縮小または削除するためにのみ行使されるべきものであつて、創立総会で新たに変態設立事項に関する定めを追加し、あるいは既存の規定を拡張することは許されないものというべく、一八七条[会社法66条,73条2項4項,100条2項]の規定する創立総会の定款変更権は、変態設立事項については及ばないと解するのが相当である。右と同旨の解釈に立つて、上告会社の原始定款に現物出資および財産引受に関する事項の記載のないことを理由に、本件土地建物の上告会社への帰属を認めなかつた原審の判断は、正当というべきである。
 所論は、創立総会に株主たるべき者が全員出席し、満場一致で決議した以上、その決議しうべき事項を右のように限定して解釈すべき理由はないと主張するが、その見解は、一八五条一項
[会社法96条]の文理上も、また、変態設立事項に関して前記のような厳重な規制を設けた法の趣旨に照らしても、相当とはなし難い。いわゆる事後設立(二四六条[会社法467条1項1号乃至4号]の手続との比較において、あるいは、本件における結果の具体的妥当性を云々して、原判決の前記判断を非難する点は、独自の見解というほかなく、論旨は採ることをえない。

 

 同第二点について。
 原判決の判示するところによると、昭和二二年七月初旬に開催された上告会社の創立総会における決議に基づいて、上告人主張のような本件土地建物に関する売買契約が結ばれた事実は認められず、かえつて、右創立総会における決議は、それに先立つて被上告人Aおよび訴外Bが上告会社の発起人総代との間に結んだ右土地建物の提供に関する判示のような内容の合意を承認したものにほかならないことが認められるというのであり、かつ、右合意は現物出資および財産引受に関する法の規定に反するものとして、その効力を否定されているのである、右合意の認定は、上告人が所有権取得原因として主張した売買契約締結の事実を否定するための積極的認定であること、右判示によつて明らかであるから、原判決に所論のような弁論主義違背は存しない。そして、原判決の右事実に関する認定判断は、その挙示の証拠に徴し、これを肯認するに難くなく、その間に所論のような理由不備等の違法があるものとは認められない。右判示のような、一個の財産の提供に対する反対給付として、その一部については株式、他の一部については金銭を与える趣旨の合意が事実上なされることを否定すべき理由はなく、この点から右認定に経験則等の違背があるということもできない。
 のみならず、上告人のいう売買契約自体、上告会社の設立登記前において、設立中の会社のため、これを代表すべき機関が会社成立を条件としてその営業用の店舗およびその敷地として使用すべく本件土地建物を買い受けたというものであつて、商法一六八条一項六号
[会社法28条2項]所定の財産引受に該ることは、その主張自体に徴して明らかであるから、これが原始定款に記載がなく、かつ、前叙のように創立総会における追加的変更は許されないものである以上、右売買を有効として、上告会社がその設立とともに当然本件土地建物の所有権を取得したものと認めるに由なく、したがつて、右売買を前提として原判決の違法をいう論旨は、原判決に影響を及ぼすべき法令違反の主張に該らないということができる。
 論旨はいずれにしても採用することをえない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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