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◆2009.03.31(火)◆
最新判例―――│posted at 03:42:24

平成20(あ)2253 電磁的公正証書原本不実記録,同供用,横領被告事件 平成21年03月26日 第二小法廷 決定 棄却


大阪高等裁判所 平成20(う)699 平成20年11月07日


裁判要旨  甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を,甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が,甲会社が名義人であることを奇貨とし,乙及び丙から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,上記建物に係る登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立するとされた事例


主文
  本件上告を棄却する。


理由
 弁護人上杉一美,同高橋金次郎の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,職権で判断する。
原判決が是認する第1審判示第1の事実の要旨は,次のとおりである。
 被告人は,平成17年2月25日に成立した,A株式会社
(以下「A」という。)及び医療法人B会の2者間,並びに,A,破産者C破産管財人弁護士D及びB会の3者間の各裁判上の和解(以下「本件和解」という。)に基づき,同日,Aから上記D及びB会に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のためAが登記簿上の所有名義人であった本件建物を,Aの実質的代表者として,B会のために預かり保管中であったものであるが,医療法人E会理事長Fほか2名と共謀の上,本件建物及びその敷地である本件土地に設定されていた本件地上権の各登記簿上の名義人が,いずれもAであることを奇貨とし,その各登記簿上にE会を登記権利者とする不実の抵当権設定仮登記をすることにより,上記D及び本件建物で病院を経営していたB会から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,真実は,AがE会から5億円を借り受ける金銭消費貸借契約を締結した事実並びにその担保として本件建物及び本件地上権に係る抵当権設定契約を締結した事実がないのに,同年3月11日ころ,法務局出張所において,登記官に対し,本件建物及び本件地上権につき,E会を登記権利者,Aを登記義務者とし,上記内容の虚偽の金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約を登記原因とする本件建物及び本件地上権に係る各抵当権設定仮登記の登記申請書等関係書類を提出し,情を知らない登記官をして,本件建物及び本件土地の登記簿の原本として用いられる電磁的記録である各登記記録にそれぞれその旨の記録をさせ,そのころ,同所において,その各記録を閲覧できる状態にさせ,もって,公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせて,これを供用するとともに,本件建物を横領した。


所論は,?原判決の是認する第1審判決は,本件建物につき抵当権設定仮登記(以下「本件仮登記」という。)を了したことにより横領罪が成立するとしているが,本登記とは異なり,仮登記には順位保全の効力があるだけであるから,横領罪は成立しない,?原判決の是認する第1審判決が,AとE会との間で本件建物に抵当権を設定した事実はないとして,本件仮登記を了したことは電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪に当たるとする一方で,横領罪にも当たるとしているのは自己矛盾である旨主張する。

 しかしながら,まず,本件仮登記の登記原因とされたAとE会との間の金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約は虚偽であり,本件仮登記は不実であるから,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立することは明らかである。そして,被告人は,本件和解により所有権がB会に移転した本件建物を同会のために預かり保管していたところ,共犯者らと共謀の上,金銭的利益を得ようとして本件仮登記を了したものである。仮登記を了した場合,それに基づいて本登記を経由することによって仮登記の後に登記された権利の変動に対し,当該仮登記に係る権利を優先して主張することができるようになり,これを前提として,不動産取引の実務において,仮登記があった場合にはその権利が確保されているものとして扱われるのが通常である。以上の点にかんがみると,不実とはいえ,本件仮登記を了したことは,不法領得の意思を実現する行為として十分であり,横領罪の成立を認めた原判断は正当である。また,このような場合に,同罪と上記電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が併せて成立することは,何ら不合理ではないというべきである(なお,本件仮登記による不実記録電磁的公正証書原本供用罪と横領罪とは観念的競合の関係に立つと解するのが相当である。)
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官古田佑紀 裁判官今井功 裁判官中川了滋 裁判官竹内行夫)

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