最決平24.10.15 佐藤

最決平24.10.15 佐藤

平成21()1985 収賄,競売入札妨害被告事件 平成241015日 第一小法廷 決定 棄却 

 

東京高等裁判所 平成20()2284 平成211014

 

判示事項

 売買代金が時価相当額であったとしても,土地の売買による換金の利益が賄賂に当たるとされた事例

裁判要旨

 県知事とその実弟が共謀の上,実弟が代表取締役を務める会社において,土地を早期に売却する必要性があったが,思うように売却できずにいる状況の中で,県が発注した建設工事受注の謝礼の趣旨の下に,受注業者の下請業者に当該土地を買い取ってもらい代金の支払を受けたという事実関係の下においては,売買代金が時価相当額であったとしても,当該土地の売買による換金の利益が賄賂に当たる。

参照法条

 刑法(平成15年法律第138号による改正前のもの)1971

 

主 文

  本件各上告を棄却する。

 

理 由

 検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認の主張であり,被告人両名の弁護人宗像紀夫ほかの上告趣意のうち,憲法38条2項違反をいう点は,記録を調べても,自白の任意性を疑うに足りる証跡は認められないから,所論は前提を欠き,判例違反をいう点は,本件と事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でないか,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であり,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 弁護人の所論に鑑み,本件収賄罪に関し,賄賂性について職権で判断する。

 

原判決の認定した本件収賄罪の犯罪事実の要旨は,「被告人A(以下「被告人A」という。)は,福島県知事として,同県の事務を管理し執行する地位にあり,同県が発注する建設工事に関して,一般競争入札の入札参加資格要件の決定,競争入札の実施,請負契約の締結等の権限を有しており,被告人B(以下「被告人B」という。)は,被告人Aの実弟であり,縫製品の製造,加工,販売等を業とするC株式会社の代表取締役として同社を経営していたものである。福島県は,同県東部の木戸川の総合開発の一環として行う木戸ダム本体建設工事(以下「木戸ダム工事」という。)について,一般競争入札を経て,平成12年10月16日,D株式会社ほか2社の共同企業体に発注した。被告人両名は,共謀の上,Dが木戸ダム工事を受注したとき被告人Aから有利便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼の趣旨で,D副会長のEが下請業者であるF株式会社取締役副社長のGに指示をした結果,Fが買取りに応じるものであることを知りながら,被告人Bが,Gに対し,FにおいてCの所有する福島県郡山市の16筆の土地合計約1万1101㎡を8億7372万円余で買い取るように求め,Fが前記土地を同価額で買い取ることを承諾させた。その結果,平成14年8月28日,Fから,その売買代金として,福島県郡山市の株式会社H銀行本店のC名義の当座預金口座に8億7372万円余が振込送金された。このように,被告人Bは,被告人Aとの前記共謀に基づき,前記土地売却による換金の利益の供与を受けて,同県知事の職務に関し,賄賂を収受した。」というものである。

 

所論は,本件土地の売買は,時価と売買代金額との間に差のない通常の不動産取引であるから,賄賂には当たらないと主張する。

 しかしながら,原判決の認定によれば,被告人Aは福島県知事であって,同県が発注する建設工事に関して上記の権限を有していたものであり,その実弟である被告人Bが代表取締役を務めるCにおいて,本件土地を早期に売却し,売買代金を会社再建の費用等に充てる必要性があったにもかかわらず,思うようにこれを売却できずにいる状況の中で,被告人両名が共謀の上,同県が発注した木戸ダム工事受注の謝礼の趣旨の下に,Fに本件土地を買い取ってもらい代金の支払を受けたというのであって,このような事実関係の下においては,本件土地の売買代金が時価相当額であったとしても,本件土地の売買による換金の利益は,被告人Aの職務についての対価性を有するものとして賄賂に当たると解するのが相当である。 これと同旨の原判断は正当である。

 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 白木 勇 裁判官山浦善樹)

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