最判平24.12.24

最判平24.12.24

平成23()1833 貸金請求事件 平成241214日 所第二小法廷 判決 棄却

 

東京高等裁判所 平成22()8278 平成230531

 

裁判要旨

 根保証契約の被保証債権を譲り受けた者は,その譲渡が元本確定期日前にされた場合であっても,当該根保証契約の当事者間に別段の合意がない限り,保証人に対し,保証債務の履行を求めることができる

 

主 文

  本件上告を棄却する。

  上告費用は上告人の負担とする。

 

理 由

 上告代理人布留川輝夫の上告受理申立て理由について

本件は,根保証契約の主たる債務の範囲に含まれる債務に係る債権(以下「被保証債権」という。)を当該根保証契約に定める元本確定期日前に譲り受けた被上告人が,保証人である上告人に対し,保証債務の履行を求める事案である。

 

原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

 (1) 株式会社Aは,平成19年6月29日,有限会社Bに対し,弁済期を平成20年6月5日として8億円を貸し付けた。

 (2) 上告人は,平成19年6月29日,Aに対し,Aを貸主とし,Bを借主とする金銭消費貸借契約取引等により生ずるBの債務(上記(1)の貸付けに係るものを含む。)を主たる債務とし,極度額を48億3000万円,保証期間を平成19年6月29日から5年間とする連帯保証をした(以下「本件根保証契約」という。)

 (3) Aは,平成20年8月25日,Bに対し,弁済期を平成21年8月5日として7億円を貸し付けた。

 (4) Aは,平成20年8月25日,Bに対し,弁済期を平成21年8月5日として9990万円を貸し付けた。

 (5) Aは,平成20年9月26日,上記(3)及び(4)の各貸付けに係る債権を株式会社Cに譲渡し,Cは,同日,当該各債権を被上告人に譲渡した。

 

原審は,被保証債権が譲渡された場合には,その譲渡が根保証契約に定める元本確定期日前であっても,保証人に対する保証債権もこれに随伴して移転するとして,被上告人の請求を認容すべきものとした。

 

所論は,被保証債権の譲渡が根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合には,当該被保証債権の譲受人が保証人に対し,保証債務の履行を求めることはできないと解すべきであるというものである。

 

根保証契約を締結した当事者は,通常,主たる債務の範囲に含まれる個別の債務が発生すれば保証人がこれをその都度保証し,当該債務の弁済期が到来すれば,当該根保証契約に定める元本確定期日(本件根保証契約のように,保証期間の定めがある場合には,保証期間の満了日の翌日を元本確定期日とする定めをしたものと解することができる。)前であっても,保証人に対してその保証債務の履行を求めることができるものとして契約を締結し,被保証債権が譲渡された場合には保証債権もこれに随伴して移転することを前提としているものと解するのが合理的である。そうすると,被保証債権を譲り受けた者は,その譲渡が当該根保証契約に定める元本確定期日前にされた場合であっても,当該根保証契約の当事者間において被保証債権の譲受人の請求を妨げるような別段の合意がない限り,保証人に対し,保証債務の履行を求めることができるというべきである。

 本件根保証契約の当事者間においては上記別段の合意があることはうかがわれないから,被上告人は,上告人に対し,保証債務の履行を求めることができる。

 

これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官須藤正彦の補足意見がある。

 

 裁判官須藤正彦補足意見は,次のとおりである。

 私は,法廷意見に賛同するものであるが,所論に鑑み,いわゆる根保証の随伴性の問題に関連して以下のとおり補足しておきたい。

 上告人は,本件根保証契約を根抵当権と同じように捉えるべきであり,元本確定期日前にAから譲渡された債権については保証人としての責めを負わないにもかかわらず,上告人に保証人としての責めを負わせることになる原審の結論が上告人の予測に反する結果を招来する旨の主張をする。もとより,根保証契約については,契約自由の原則上,別段の合意により保証債権に随伴性を生じさせないようにすることも自由であり,したがって,例えば,根保証契約において,主たる債務の範囲に含まれる債務のうち,元本確定期日の時点で主債務者が当初の債権者に対して負う債務のみについて保証人が責めを負う旨の定めを置いておけば,その定めは,法廷意見における「譲受人の請求を妨げる別段の合意」と解されて,そのとおりの効力が認められるというべきである。

 しかるところ,原審の適法に確定した事実によれば,Aは,Bに対し,平成19年6月29日,8億円を貸し付け,さらにその借換えとして,同20年8月25日に計7億9990万円を貸し付けたものである。そして,記録によれば,平成19年6月29日付けの,A,B及び上告人の三者を当事者とする「金銭消費貸借・手形割引等継続取引並びに限度付根保証承諾書兼金銭消費貸借契約証書」(以下「本件根保証契約書」という。)には,保証人たる上告人は,極度額(48億3000万円)の範囲内で,同日付けの貸付けに係る債務のほか,本件根保証契約締結日現在に発生している債務及び5年間の保証期間(元本確定期日の前日まで)に発生する債務並びにこれらのうち債権者(A)がCに譲渡した債権に係る債務を保証する旨が記載されている。このような本件根保証契約書上に記載された文言からすれば,主たる債務の範囲に含まれる債務のうち,元本確定期日の時点で主債務者たるBが当初の債権者たるAに対して負う債務のみについて保証人としての責めを負うとの趣旨はうかがい得ない。

 なお,平成19年6月29日付けの8億円の貸付けに係る債務は,主たる債務の範囲に含まれているから,上告人は,この個別の債務を含めて保証したものである。もとより,個別の債務の保証債権は主たる債権の移転に随伴するところ,もしこの8億円の貸付けに係る債権について譲渡がされれば,保証債権も債権の譲受人に移転するから,その場合,上告人は8億円の貸付けに係る債権について保証人としての責めを免れないところのものである。しかして,この8億円の貸付けに係る債権とその借換えによって発生した7億9990万円の貸付けに係る債権とは経済的実質においては同一と評価され,後者は元本確定期日前にCに譲渡され,それが更に被上告人に譲渡されたものであるから,上告人が当該債権について保証人としての責めを負うということはその予測の範囲内のことと思われるのである。

 以上要するに,本件根保証契約書の記載文言に沿った合理的意思解釈という見地に立ってみた場合,本件根保証契約においては,被上告人の請求を妨げるような別段の合意がされたとみることはできないというべきである。

(裁判長裁判官 須藤正彦補足意見 裁判官 竹内行夫 裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信)

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