最判平24.12.21

最判平24.12.21

平成23()1626 所有権移転登記手続,持分移転登記抹消登記手続等,持分権確認等請求事件 平成241221日 第二小法廷 判決 その他

 

名古屋高等裁判所 平成22()530 成230512

 

裁判要旨

 将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものとされた事例

 

主 文

   原判決主文第10項及び第12項中,以下の(1)及び(2)記載の各請求を認容した部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。

   (1) 被上告人X1の上告人に対する平成22年11月27日以降に生ずべき1か月5万4983円の割合による不当利得金の返還請求

   (2) 被上告人X2の上告人に対する平成22年11月27日以降に生ずべき1か月2408円の割合による不当利得金の返還請求

   前項の各部分に係る被上告人らの訴えを却下する。

   上告人のその余の上告を棄却する。

   訴訟の総費用は,これを4分し,その3を上告人の,その余を被上告人らの負担とする。

 

理 由

 上告代理人前川弘美ほかの上告受理申立て理由第3の4について

 本件は,第1審判決別紙物件目録記載1~3の各土地の共有者の1人である上告人がこれを第三者に駐車場として賃貸して得る収益につき,他の共有者である被上告人らが,上告人に対し,被上告人らの持分割合に相当する部分の不当利得返還請求等をする事案である。

 原審は,被上告人らの請求を一部認容したが,原審の判断中,原審の口頭弁論終結の日の翌日である平成22年11月27日以降に生ずべき不当利得金の返還請求を認容した部分(以下「本件将来請求認容部分」という。)は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものである(最高裁昭和59年(オ)第1293号同63年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事153号627頁参照)

 そうすると,原審の判断中,本件将来請求認容部分には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,この点をいう論旨は理由がある。原判決中,本件将来請求認容部分は破棄を免れず,同部分に係る被上告人らの請求を棄却した第1審判決を取り消し,同部分に係る被上告人らの訴えを却下すべきである。なお,当該訴えは,上記のとおり不適法でその不備を補正することができないものであるから,口頭弁論を経ないで判決をすることとする(最高裁平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・裁判集民事224号391頁参照)

 その余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官須藤正彦,同千葉勝美の各補足意見がある。
 

 裁判官千葉勝美補足意見は,次のとおりである。

 私は,将来の給付請求の適格との関連で,法廷意見に付加して,次のとおり私見を述べておきたい。

将来発生すべき債権に基づく将来の給付請求については,その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し,その継続が予測されるとともに,債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ,しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ強制執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても,当事者間の衡平を害することがなく,格別不当とはいえない場合に,例外的に可能となるものと解されている(最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁参照)

 これを前提にした上で,前掲最高裁昭和63年3月31日第一小法廷判決は,共有物件である土地を第三者に専用駐車場として賃貸することによって得た賃料収入に関し,相手方の持分割合を超える部分の不当利得返還を求める請求については,賃貸借契約が解除等で終了したり,賃借人が賃料の支払を怠っているようなときには,将来請求はその基礎を欠くところ,これらは専ら賃借人側の意思等に基づきされることでもあり,必ず約定どおりに支払われるとは限られない等の点から,将来の給付請求を可能とする適格を欠くとしている。

この昭和63年第一小法廷判決は,裁判集に登載され,判示事項としては,「将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものとされた事例」となっており,文字どおり事例判断であることが明示されている。もっとも,その裁判要旨としては,持分割合を超える賃料部分の不当利得返還を求める請求のうち事実審の口頭弁論終結時後に係る部分は,将来の給付請求の適格を欠くとされ,法理に近い表現が用いられてはいるが,当該事案を前提とした判示であり,事例判断であることは争いがないところであろう。

 そうすると,事例判断としてのこの判決の射程距離が問題になるが,この判決の理解としては,持分割合を超える賃料部分の不当利得返還を求める将来請求の場合を述べたものとする理解(このような捉え方をしていると思われる他の最高裁判例として,最高裁平成7年(オ)第1203号同12年1月27日第一小法廷判決・民集54巻1号1頁がある。)と,①の場合に加え,当該賃料が駐車場の賃料であるという賃料の内容・性質をも含んだ事例についての判断であるとする理解とがあり得るところである。

 このうち,①の理解によると,この裁判要旨については,将来得るべき賃料はそれが現実に受領されて初めて不当利得返還請求権が発生することから,その発生は第三者の意思等によるところ,そのような構造を有する将来請求全てに射程距離が及ぶ判断であると捉えることにもなろう。しかし,昭和56年大法廷判決の法理によって将来請求の適否を判断するためには,当該不当利得返還請求権の内容・性質,すなわち,その発生の基礎となる事実関係・法律関係が将来も継続するものかどうかといった事情が最重要であり,それを個別に見て判断すべきであるとすれば,昭和63年第一小法廷判決の射程距離については②の理解を採ることになろう。

私としては,上記①の理解はいささか射程が広すぎるように思う。すなわち,居住用家屋の賃料や建物の敷地の地代などで,将来にわたり発生する蓋然性が高いものについては将来の給付請求を認めるべきであるし,他方,本件における駐車場の賃料については,50台程度の駐車スペースがあり,これが常時全部埋まる可能性は一般には高くなく,また,性質上,短期間で更新のないまま期間が終了したり,期間途中でも解約となり,あるいは,より低額の賃料で利用できる駐車場が近隣に現れた場合には賃借人は随時そちらに移る等の事態も当然に予想されるところであって,将来においても駐車場収入が現状のまま継続するという蓋然性は低いと思われ,その点で将来の給付請求を認める適格があるとはいえない。いずれにしろ,将来の給付請求を認める適格の有無は,このようにその基礎となる債権の内容・性質等の具体的事情を踏まえた判断を行うべきであり,その意味でも昭和63年第一小法廷判決の射程距離については,上記②の理解に立つべきである。

ところで,本件の法廷意見は,昭和63年第一小法廷判決を引用して,共有者の1人が共有物である本件の駐車場を第三者に賃貸して得る駐車場収入につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しない旨を説示している。これは,本件が昭和63年第一小法廷判決と事案が類似していること,特に駐車場の賃料が不当利得返還請求権の対象となっていることから,事案の内容を詳細に判示する必要がないため,簡潔な表現で判断を示したものと解することができる。しかしながら,将来的には,将来の給付請求を認める適格について,昭和63年第一小法廷判決が上記①を射程としているという理解を前提にして適格を肯定する範囲が不当に狭くなるということがないように,それにふさわしい事案が係属し,その処理がされる際には,上記②を射程としていることが明らかとなるように当審の判断を示す必要があるものと考える。

 

 裁判官須藤正彦は,裁判官千葉勝美の補足意見に同調する。

(裁判長裁判官 須藤正彦補足意見 裁判官 竹内行夫 裁判官 千葉勝美補足意見 裁判官 小貫芳信)

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