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最判平30.6.1ハマキョウレックス


平成28()2099 未払賃金等支払請求事件 平成3061日 第二小法廷 判決 その他

 

大阪高等裁判所 平成27()3037 平成28726

 

判示事項

 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合における当該有期契約労働者の労働条件
 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」の意義
 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」の意義
 乗務員のうち無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

 

主 文

本件上告を棄却する。

原判決中,被上告人の平成25年4月1日以降の皆勤手当に係る損害賠償請求に関する部分を破棄する。

前項の部分につき,本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

被上告人のその余の附帯上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とし,前項の部分に関する附帯上告費用は被上告人の負担とする。

 

理 由

第1 事案の概要

本件は,期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して上告人において勤務している被上告人が,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を上告人と締結している労働者(以下「正社員」という。)と被上告人との間で,無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当,通勤手当,家族手当,賞与,定期昇給及び退職金(以下,これらを併せて「本件賃金等」という。)に相違があることは労働契約法20条(労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)2条による改正後のもの。以下同じ。)に違反しているなどと主張して,上告人に対し,(1)労働契約に基づき,被上告人が上告人に対し,本件賃金等に関し,正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求める(以下,この請求を「本件確認請求」という。)とともに,(2)①主位的に,労働契約に基づき,平成21年10月1日から同27年11月30日までの間に正社員に支給された無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当及び通勤手当(以下「本件諸手当」という。)と,同期間に被上告人に支給された本件諸手当との差額の支払を求め(以下,この請求を「本件差額賃金請求」という。)予備的に,不法行為に基づき,上記差額に相当する額の損害賠償を求める(以下,この請求を「本件損害賠償請求」という。)などの請求をする事案である。

原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1) 上告人は,一般貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社であり,平成25年3月31日現在の従業員数は4597人である。

(2) 被上告人は,平成20年10月6日頃,上告人との間で以下の内容の有期労働契約を締結し,トラック運転手として配送業務に従事している。上記労働契約は,その後順次更新されており,その間に被上告人の時給は1150円から1160円に増額されている(以下,更新の前後を問わず,上告人と被上告人との間の労働契約を「本件労働契約」という。)

期 間 平成20年10月6日から同21年3月31日まで(ただし,更新する場合があり得る。)

勤務場所 彦根支店

業務内容 配車ドライバー

賃 金 時給 1150円,通勤手当 月額3000円

昇給賞与 原則として昇給及び賞与の支給はない。ただし,会社の業績及び勤務成績を考慮して,昇給し又は賞与を支給することがある。

(3) 正社員に適用される就業規則(以下「本件正社員就業規則」という。)は,従業員が5年以上勤務した後に退職するときは退職金を支給する旨を定めている。また,正社員に適用され,就業規則の性質を有する給与規程(以下「本件正社員給与規程」という。)は,基本給は年齢給,勤続給及び職能給で構成すること,乗務員が1か月間無事故で勤務したときは無事故手当として1万円を支給すること,特殊業務に携わる従業員に対して月額1万円から2万円までの範囲内で作業手当を支給すること,従業員の給食の補助として月額3500円の給食手当を支給すること,21歳以下の従業員に対しては月額5000円,22歳以上の従業員に対しては月額2万円の住宅手当を支給すること,乗務員が全営業日に出勤したときは皆勤手当として月額1万円を支給すること,常時一定の交通機関を利用し又は自動車等を使用して通勤する従業員に対し,交通手段及び通勤距離に応じて所定の通勤手当を支給すること,扶養家族を有する従業員に対して家族手当を支給すること,会社の業績に応じて賞与を支給すること等を定めている。

なお,被上告人が勤務している彦根支店においては,正社員に対して月額1万円の作業手当が一律に支給されている。また,本件正社員給与規程によれば,被上告人と交通手段及び通勤距離が同じ正社員に対して支給される通勤手当は月額5000円である。

(4) 上告人と有期労働契約を締結している労働者(以下「契約社員」という。)等に適用される「嘱託,臨時従業員およびパートタイマーの就業規則」(以下「本件契約社員就業規則」という。)は,基本給は時間給として職務内容等により個人ごとに定めること,交通機関を利用して通勤する者に対して所定の限度額の範囲内でその実費を支給すること,原則として昇給しないが会社の業績と本人の勤務成績を考慮して昇給することがあること,賞与及び退職金は原則として支給しないこと等を定めている。本件契約社員就業規則には,無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当及び家族手当に関する定めはない。

なお,平成25年12月までは被上告人に対して月額3000円の通勤手当が支給されていたが,同26年1月以降は,契約社員に対しても正社員と同じ基準により通勤手当が支給されるようになったため,両者の間で通勤手当の支給額に相違はなくなった。

(5) 上記のとおり,契約社員である被上告人については,正社員と比較すると,無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当及び家族手当の支給がなく,賞与及び退職金の支給並びに定期昇給も原則としてないとの相違があり,また,平成25年12月以前においては,交通手段及び通勤距離が同じ正社員と比較して通勤手当の支給額が2000円少ないとの相違もあった。

(6) 上告人の彦根支店におけるトラック運転手の業務の内容には,契約社員と正社員との間に相違はなく,当該業務に伴う責任の程度に相違があったとの事情もうかがわれない。

本件正社員就業規則には,上告人は業務上必要がある場合は従業員の就業場所の変更を命ずることができる旨の定めがあり,正社員については出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるが,本件契約社員就業規則には配転又は出向に関する定めはなく,契約社員については就業場所の変更や出向は予定されていない。また,正社員については,公正に評価された職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて,従業員の適正な処遇と配置を行うとともに,教育訓練の実施による能力の開発と人材の育成,活用に資することを目的として,等級役職制度が設けられているが,契約社員についてはこのような制度は設けられていない。

 

第2 附帯上告代理人中島光孝ほかの附帯上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件確認請求及び本件差額賃金請求の全部並びに本件損害賠償請求のうち住宅手当及び皆勤手当に係る部分をいずれも棄却すべきものとした。

(1) 契約社員である被上告人と正社員との間で本件賃金等に相違があることが労働契約法20条に違反するとしても,被上告人の労働条件が正社員と同一になるものではないから,本件確認請求及び本件差額賃金請求は,いずれも理由がない。

(2) 被上告人と正社員との間の住宅手当及び皆勤手当に係る相違は不合理と認められるものには当たらないから,当該相違があることは労働契約法20条に違反しない。

しかしながら,原審の上記1(1)の判断及び同(2)のうち住宅手当に係る相違に関する判断はいずれも是認することができるが,同(2)のうち皆勤手当に係る相違に関する判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 労働契約法20条は,有期労働契約を締結している労働者(以下「有期契約労働者」という。)の労働条件が,期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合においては,当該労働条件の相違は,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。),当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。同条は,有期契約労働者については,無期労働契約を締結している労働者 と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく,両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ,有期契約労働者の公正な処遇を図るため,その労働条件につき,期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。

そして,同条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に,職務の内容,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して,その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり,職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。

(2) 本件確認請求及び本件差額賃金請求について

本件確認請求及び本件差額賃金請求は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合,当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるという解釈を前提とするものである。

労働契約法20条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや,その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば,同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であり,有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となるものと解される。

もっとも,同条は,有期契約労働者について無期契約労働者との職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であり,文言上も,両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に,当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなる旨を定めていない。

そうすると,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。

また,上告人においては,正社員に適用される就業規則である本件正社員就業規則及び本件正社員給与規程と,契約社員に適用される就業規則である本件契約社員就業規則とが,別個独立のものとして作成されていること等にも鑑みれば,両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に,本件正社員就業規則又は本件正社員給与規程の定めが契約社員である被上告人に適用されることとなると解することは,就業規則の合理的な解釈としても困難である。

以上によれば,仮に本件賃金等に係る相違が労働契約法20条に違反するとしても,被上告人の本件賃金等に係る労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるものではないから,被上告人が,本件賃金等に関し,正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求める本件確認請求は理由がなく,また,同一の権利を有する地位にあることを前提とする本件差額賃金請求も理由がない。

(3) 本件損害賠償請求について

労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより相違していることを前提としているから,両者の労働条件が相違しているというだけで同条を適用することはできない。一方,期間の定めがあることと労働条件が相違していることとの関連性の程度は,労働条件の相違が不合理と認められるものに当たるか否かの判断に当たって考慮すれば足りるものということができる。

そうすると,同条にいう「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である。

これを本件についてみると,本件諸手当に係る労働条件の相違は,契約社員と正社員とでそれぞれ異なる就業規則が適用されることにより生じているものであることに鑑みれば,当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができる。したがって,契約社員と正社員の本件諸手当に係る労働条件は,同条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たるということができる。

次に,労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が,職務の内容等を考慮して不合理と認められるものであってはならないとしているところ,所論は,同条にいう「不合理と認められるもの」とは合理的でないものと同義であると解すべき旨をいう。しかしながら,同条が「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることに照らせば,同条は飽くまでも労働条件の相違が不合理と評価されるか否かを問題とするものと解することが文理に沿うものといえる。また,同条は,職務の内容等が異なる場合であっても,その違いを考慮して両者の労働条件が均衡のとれたものであることを求める規定であるところ,両者の労働条件が均衡のとれたものであるか否かの判断に当たっては,労使間の交渉や使用者の経営判断を尊重すべき面があることも否定し難い。

したがって,同条にいう「不合理と認められるもの」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当である。

そして,両者の労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的評価を伴うものであるから,当該相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については当該相違が同条に違反することを主張する者が,当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については当該相違が同条に違反することを争う者が,それぞれ主張立証責任を負うものと解される。

上記イで述べたところを踏まえて,本件諸手当のうち住宅手当及び皆勤手当に係る相違が職務の内容等を考慮して不合理と認められるものに当たるか否かについて検討する。

() 本件では,契約社員である被上告人の労働条件と,被上告人と同じく上告人の彦根支店においてトラック運転手(乗務員)として勤務している正社員の労働条件との相違が労働契約法20条に違反するか否かが争われているところ,前記第1の2(6)の事実関係等に照らせば,両者の職務の内容に違いはないが,職務の内容及び配置の変更の範囲に関しては,正社員は,出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるほか,等級役職制度が設けられており,職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて,将来,上告人の中核を担う人材として登用される可能性があるのに対し,契約社員は,就業場所の変更や出向は予定されておらず,将来,そのような人材として登用されることも予定されていないという違いがあるということができる。

() 上告人においては,正社員に対してのみ所定の住宅手当を支給することとされている。この住宅手当は,従業員の住宅に要する費用を補助する趣旨で支給されるものと解されるところ,契約社員については就業場所の変更が予定されていないのに対し,正社員については,転居を伴う配転が予定されているため,契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得る。

したがって,正社員に対して上記の住宅手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものとはいえないから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと解するのが相当である。

() 上告人においては,正社員である乗務員に対してのみ,所定の皆勤手当を支給することとされている。この皆勤手当は,上告人が運送業務を円滑に進めるには実際に出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから,皆勤を奨励する趣旨で支給されるものであると解されるところ,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから,出勤する者を確保することの必要性については,職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。

また,上記の必要性は,当該労働者が将来転勤や出向をする可能性や,上告人の中核を担う人材として登用される可能性の有無といった事情により異なるとはいえない。そして,本件労働契約及び本件契約社員就業規則によれば,契約社員については,上告人の業績と本人の勤務成績を考慮して昇給することがあるとされているが,昇給しないとが原則である上,皆勤の事実を考慮して昇給が行われたとの事情もうかがわれない。

したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の皆勤手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

(4) 以上によれば,本件確認請求及び本件差額賃金請求の全部並びに本件損害賠償請求のうち住宅手当に係る部分を棄却すべきものとした原審の判断は,いずれも正当として是認することができる。これらの点に関する論旨は採用することができない。

他方,本件損害賠償請求のうち,労働契約法20条が適用されることとなる平成25年4月1日以降の皆勤手当に係る部分を棄却すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は理由があり,原判決のうち上記判断に係る部分は破棄を免れない。

なお,その余の請求に関する附帯上告については,附帯上告受理申立て理由が附帯上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。

 

第3 上告代理人上野勝ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

原審は,前記第1の2の事実関係等の下において,契約社員と正社員の無事故手当,作業手当,給食手当及び通勤手当(以下「本件無事故手当等」という。)に係る相違は,期間の定めがあることにより生じた相違であり,かつ,不合理と認められるものに当たるから,労働契約法20条が適用されることとなる平成25年4月1日以降に上告人がこのような相違を設けていることは不法行為に当たるとして,本件損害賠償請求の一部を認容すべきものとした。

(1) 契約社員と正社員の本件諸手当に係る労働条件が,労働契約法20条にいう期間の定めがあることにより相違していると解されることは,前記第2の2(3)アで述べたとおりである。したがって,両者の間で本件諸手当のうち本件無事故手当等に相違があることが同条に違反するか否かは,当該相違が同条にいう不合理と認められるものに当たるか否かによることとなる。

(2) 上告人においては,正社員である乗務員に対してのみ,所定の無事故手当を支給することとされている。この無事故手当は,優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得を目的として支給されるものであると解されるところ,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから,安全運転及び事故防止の必要性については,職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。また,上記の必要性は,当該労働者が将来転勤や出向をする可能性や,上告人の中核を担う人材として登用される可能性の有無といった事情により異なるものではない。加えて,無事故手当に相違を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情もうかがわれない。

したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の無事故手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

本件正社員給与規程は,特殊作業に携わる正社員に対して月額1万円から2万円までの範囲内で作業手当を支給する旨を定めているが,当該作業手当の支給対象となる特殊作業の内容について具体的に定めていないから,これについては各事業所の判断に委ねる趣旨であると解される。そして,被上告人が勤務する彦根支店では,社員に対して作業手当として一律に月額1万円が支給されている。

上記の作業手当は,特定の作業を行った対価として支給されるものであり,作業そのものを金銭的に評価して支給される性質の賃金であると解される。しかるに,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならない。また,職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることによって,行った作業に対する金銭的評価が異なることになるものではない。加えて,作業手当に相違を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情もうかがわれない。

したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の作業手当を一律に支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

上告人においては,正社員に対してのみ,所定の給食手当を支給することとされている。この給食手当は,従業員の食事に係る補助として支給されるものであるから,勤務時間中に食事を取ることを要する労働者に対して支給することがその趣旨にかなうものである。しかるに,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならない上,勤務形態に違いがあるなどといった事情はうかがわれない。また,職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは,勤務時間中に食事を取ることの必要性やその程度とは関係がない。加えて,給食手当に相違を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情もうかがわれない。

したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の給食手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

上告人においては,平成25年12月以前は,契約社員である被上告人に対して月額3000円の通勤手当が支給されていたが,被上告人と交通手段及び通勤距離が同じ正社員に対しては月額5000円の通勤手当を支給することとされていた。この通勤手当は,通勤に要する交通費を補塡する趣旨で支給されるものであるところ,労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。また,職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは,通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。加えて,通勤手当に差違を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情もうかがわれない。

したがって,正社員と契約社員である被上告人との間で上記の通勤手当の金額が異なるという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

(3) 上記(1)及び(2)で検討したところによれば,本件無事故手当等に相違があることは,いずれも労働契約法20条に違反すると解される。なお,所論は,同条は私法上の効力のない訓示規定であるから不法行為は成立しない旨をいうが,同条が私法上の効力を有する規定であると解すべきであることは,前記第2の2(2)イで述べたとおりである。

(4) 以上によれば,労働契約法20条が適用されることとなる平成25年4月1日以降において,上告人が本件無事故手当等に相違を設けていたことが不法行為に当たるとして,同日以降の本件無事故手当等に係る差額相当額の支払を求める限度で本件損害賠償請求を認容すべきものとした原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

 

第4 結論

以上のとおりであるから,原判決中,被上告人の平成25年4月1日以降の皆勤手当に係る損害賠償請求に関する部分を破棄し,被上告人が皆勤手当の支給要件を満たしているか否か等について更に審理を尽くさせるため同部分につき本件を原審に差し戻すとともに,上告人の上告及び被上告人のその余の附帯上告を棄却することとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本庸幸 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 菅野博之 裁判官三浦 守)

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