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最判昭39.10.13権利濫用

昭和37()885 家屋明渡等請求 昭和391013日 第三小法廷 判決 棄却民集 第1881578

 

福岡高等裁判所 昭和37430

 

判示事項

内縁の夫死亡後その所有家屋に居住する寡婦に対して亡夫の相続人のした家屋明渡請求が権利の濫用にあたるとされた事例。

裁判要旨

内縁の夫死亡後その所有家屋に居住する寡婦に対して亡夫の相続人が家屋明渡請求をした場合において、右相続人が亡夫の養子であり、家庭内の不和のため離縁することに決定していたが戸籍上の手続をしないうちに亡夫が死亡したものであり、また、右相続人が当該家屋を使用しなければならない差し迫つた必要が存しないのに、寡婦の側では、子女がまだ、独立して生計を営むにいたらず、右家屋を明け渡すときは家計上相当重大な打撃を受けるおそれがある等原判決認定の事情(原判決理由参照)があるときは、右請求は、権利の濫用にあたり許されないものと解すべきである。

参照法条

民法13

         主    文

     本件上告を棄却する。

     上告費用は上告人の負担とする。

 

         理    由

 上告代理人山中伊佐男の上告理由一について。

 論旨は、原判決が本訴請求を権利の濫用として許されないと判断したのは民訴一八六条に違反するものであるという。しかし、記録により明らかである被上告人の主張の経過に照らせば、被上告人が所論権利濫用の主張をもなすものと解される旨の原審の判断は、首肯し得ないではない。

 しかして、上告人および被上告人間の身分関係、本件建物をめぐる右両者間の紛争のいきさつ、右両者の本件建物の各使用状況およびこれに対する各必要度等の事情につき、原審がその挙示の証拠により確定した事実関係に照らせば、被上告人に対する上告人の本件建物明渡請求が権利の濫用として許されない旨の原審の判断は、正当として肯認するに足りる。

 次に、論旨は、上告人の提出した居住権濫用の主張につき原審が判断遺脱の違法を犯したものであるというが、原審は、本件建物につき被上告人の居住権の存在を否定しているのであるから、右主張につき判断しなかつたのは、当然である。

 なお、論旨は、原判決に憲法違反がある旨云為するが、そのいうところは、前記法令違反の主張を出るものではなく、右法令違反の主張が理由のないことは、前記説示のとおりである。

 従つて、論旨はすべて採るを得ない。

 

 同二について。

 原判決中の、上告人が本件建物を独占して使用することが相当と認められるまで双方共に本件建物に同居すべきである旨の判示は、原審が、上告人の本件建物明渡請求が権利の濫用として許されない旨を判断するにあたり、傍論として記載したにすぎないものであつて、論旨のように、上告人に対し被上告人と同居する法律上の義務を負担させ、または内縁の寡婦と死亡した内縁の夫の子との間に法律上の同居義務を創設するわけのものではない。論旨は、原判決を正解しないで、その傍論的記載を非難するに帰するものであつて、採用し得ない。

 

 同三について。

 原審が、本訴請求を権利の濫用として許されない旨判断したからといつて、被上告人が本件建物に居住しうる権利を容認したものとはいえない。従つて、被上告人主張のような居住権が認められない旨の原審の判断は、上告人の本訴請求が権利の濫用として許されない旨の判断となんらそごするものではないから、論旨は採用し得ない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷

         裁判長裁判官    柏   原   語   六

            裁判官    石   坂   修   一

            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

            裁判官    横   田   正   俊

            裁判官    田   中   二   郎

 


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